毎日新聞 2012年3月14日 2時30分
社説:原子力規制庁 実質的な議論を早く
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20120314k0000m070126000c.html
「原子力規制庁」の設置が遅れる見通しが強くなってきた。政府は4月1日の発足をめざしてきたが、野党が関連法案の審議入りに難色を示しているためだ。
規制庁は東京電力福島第1原発の重大事故を教訓に政府が設置を決めた。原発事故の背景には原子力の安全規制を担う原子力安全・保安院が原発推進の立場にある経済産業省に属していた弊害がある。
保安院を経産省から分離し、他の規制業務とともに一元化することの重要性は誰もが認めるところだ。問題が明らかになっている以上、新しい規制組織をできるだけ速やかに発足させる必要があることは論をまたない。
問題はその組織の位置づけだ。政府は環境省の外局として設置する法案を閣議決定している。これに対し野党の中には、国家行政組織法第3条に基づく独立性の高い3条委員会にすべきだ、との声がある。
政府は環境省に置くことのメリットとして、委員会形式に比べ緊急時の危機管理がしやすいという点を挙げている。ただ、環境省に置かれた規制庁が、いかに政府の思惑から独立した客観的判断を下せるか、懸念があるのは確かだ。政府はより具体的に説明する必要がある。
新たに設ける「原子力安全調査委員会」についても、独立性の確保にどのように寄与できるのか、さらに詰める必要がある。危機管理についても、環境省には経験がなく、不安は残る。
一方で、野党側が主張するように公正取引委員会のような3条委員会にすれば無条件で独立性が確保されると考えるのも短絡だろう。どちらにしても大事なのは、人材の確保と組織の運営だ。
野党側も、単に審議入りを遅らせるのではなく、実質的な議論を進めてほしい。3条委員会にした場合にどのような組織によって真の独立性を担保するのか。緊急時の危機管理についても政府案より優れた組織をどう構築するのか、具体的に示してもらいたい。
規制庁の設置の遅れは原発の再稼働の判断にも影響を与える可能性がある。原子力安全委員会の検討会は13日、大飯原発3、4号機のストレステスト(安全評価)を妥当とした保安院の審査結果の確認作業を終えた。
手続き上は、規制庁の発足前でも再稼働を政治判断することができる。しかし、旧来の保安院や原子力安全委の判断を信頼せよというのは無理な注文だ。
今も不安を抱える原発を前に政治的な取引で審議が遅れることがあってはならない。与野党共に審議を進めるために最善を尽くすべきだ。
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